想定外「カンヌ映画祭」
朝日新聞によると、
カンヌ映画祭のコンペティション部門で
トリをつとめた河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」が
グランプリを受賞しました。
取材陣の多くにとって、
「殯(もがり)の森」の受賞は、想定外だったそうです。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「最大の驚き」と書いたとか。
公式上映も、満席ではなかったようです。
しかし、日本人の死生観や自然観を詩的な映像でとらえ、
「美しい映画で監督も素晴らしい。だから選んだんだよ」と
委員長の、スティーブン・フリアーズ監督は
微笑んだといいます。
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「殯の森」は、子を亡くしたばかりの介護施設の女性職員と、
妻と死別した認知症の老人が墓参途中で深い森に迷い込む
物語。監督の故郷で、活動拠点を置く奈良市の郊外の山里
を舞台にした。
河瀬監督は97年のカンヌで、初の劇映画「萌(もえ)の
朱雀(すざく)」がカメラドール(新人監督賞)を受賞。
それから10年で結婚、離婚、介護、再婚、子育てを経験
した。グランプリ受賞のスピーチは「映画を作るって本当
に大変なこと。それは人生に似ています」と切り出した。
「人生はたくさんの困難がある。お金とか服とか車とか、
形あるものによりどころを求めようとするが、満たされる
のは一部。目に見えないもの――誰かの思い、光、風、亡
くなった人の面影。私たちは、そういうものに心の支えを
見つけた時、たった一人でも立っていられる、そんな生き
物なのだと思います」
その言葉に観衆は大きな拍手を送り、監督は「そういった
映画を評価してくれてありがとう。この世界はすばらしい
です」と応じた。
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河瀬監督は、
「今回は『喪』を描いた映画が多かった。
全世界的に人々が迷っているんじゃないかな」
とも、語ったそうです。
〝全世界的に迷っている〟……
なんとなく、共感を覚えます。
また、毎日新聞のひと欄で、
「死を自分のことと認識した時に、
人間の中で何かが変わる」と静かに訴えた作品が
審査員の心をとらえた、とありましたように、
「死」という、現代人の盲点に、
スポットをあてているのは、とても興味深いです。
たくさんの困難と闘っていく人生、
お金とか服とか車とかに拠り所を求めても
完全に満たされることはない、
というのも、よく分かります。
そして、
誰かの思い、光、風、亡くなった人の面影など、
目に見えないものに、心の支えを見つけた時、
たった一人でも、立っていられる、
人間は、そういう生き物だ思うと語り、
そこに、大きな拍手が送られたわけですが、
形あるものであろうと、
形なきものだろうと、
「満たされるのは一部」という点は、
変わらないのではないでしょうか。
形なきものに、拠り所を求めるほうが
美しく見えますが、
人間を、根本的に救う支えにはなりえないと思います。
「そんなことは映画の背負うべきテーマではない」
と言われれば、それまでですが、
求めているのは、根本的な救いです。
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